「君しか知らない話をどうか僕に。」

2020.9.24 (18:03)

旅は好きだった。
旅の目的は、何かを見ることではなく、何も見ないことだった。
自分を知っている人間がいないというだけで、
僕の心ははずんだ。

やがて、誰かと旅をすることを覚えた。
それは何かを見る旅だった。
目的を達するための旅だった。
僕は次第に疲弊した。

奥崎の実家に挨拶に行った。
目的は達した。

僕は君のことを知りたいと思った。
雪が降り出した。

君は君しか知らないことをたくさん話した。
僕は、そうやって人を好きになる。

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