
当時の友人には、
「好きな人と自分の部屋にずっといてそういう気分にならなかったのか」
とたびたび訊かれた。
ならなかった。
多分ヌードデッサンの授業で変な気分にならないのと同じだ。
あるいは僕は先輩のことを好きじゃなかったんだと思う。
触れてはいけないという壁を自分で作って、
頑なにそれを守ることを恋愛と錯覚していたのかもしれない。
ただ一度だけ、
それを破って僕は先輩に触れた。

当時の友人には、
「好きな人と自分の部屋にずっといてそういう気分にならなかったのか」
とたびたび訊かれた。
ならなかった。
多分ヌードデッサンの授業で変な気分にならないのと同じだ。
あるいは僕は先輩のことを好きじゃなかったんだと思う。
触れてはいけないという壁を自分で作って、
頑なにそれを守ることを恋愛と錯覚していたのかもしれない。
ただ一度だけ、
それを破って僕は先輩に触れた。
ハセガワが夜、ランプの明かりの下でスケッチブックに絵を描いている。彼の視線の先には、タバコをくわえ、無表情で座っているオズ先輩がいる。ハセガワは「このまま、嫌いになるまで描いてられたらなと思った」と心の中で語っている。二人の間に流れる静かで切ない時間が描かれている。