2024.4.1
「絵。」
「あたし、やっぱりお前のこときらいや。」
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「あたし、やっぱりお前のこときらいや。」
喧嘩するほど仲が良いとは言うけれど、
セキグチとヨシダは結局一度も仲良くならなかった。
そしてその周辺でうろうろと顔色を伺っているだけの僕は、
訳知り顔で顔をつっこむとろくなことにならないことを
学習した。
何か一言をきっかけにそれまで和気あいあいとしていた空気が
不穏なものに変わる。
そういう瞬間はちょっとドキドキするもので、
僕はイーゼルに立てたキャンバスに隠れながら
二人の話をじっと聞いていた。
あんまりいい趣味じゃない。
寄り添ってあげたいという本能的な気持ちと、
結果的に寄り添えない、あるいは寄り添った結果
別の人間にとっては残酷だったという経験と、
当然両方があり、せめぎあって生きている。
清潔なのがいいなと思う。
まっしろで穢れのない状態だけが清潔だとは思わない。
あらゆる思考や状況を飲み込んだ上で
まっすぐ立っている。
まっすぐ見ている。
そういうのがいいなと思う。
溶け合ってどろどろのスープのようになった関係より
素材がそれぞれ独立した味を保つ方がいい。