「杉ちゃんのタートルネック。」
杉ちゃんてタートルネックのセータ着てること多いよね、
って訊いたら「先輩が着てたから」とつまんなそうに答えた。
「アンタもよく着てる」というから「先輩が着てたから」と答えた。
二人で話していると、先輩呼んでみようか来るかもしれないよ、
という話にいつもなった。
結局一度も呼んだことがない。
僕たちはいつだってこそこそしていた。
オズ先輩の後輩で、純粋のレズビアン。オズ先輩を取り合うライバルでもあり、美術部の仲間でもあった。
時々夜にやってきてただ泣く。
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杉ちゃんてタートルネックのセータ着てること多いよね、
って訊いたら「先輩が着てたから」とつまんなそうに答えた。
「アンタもよく着てる」というから「先輩が着てたから」と答えた。
二人で話していると、先輩呼んでみようか来るかもしれないよ、
という話にいつもなった。
結局一度も呼んだことがない。
僕たちはいつだってこそこそしていた。
杉ちゃんについて書いた日記はそんなには多くない。
ただそのすべてが僕の不甲斐なさだったり女々しさだったりを
なじる内容なので、
杉ちゃん自身の性格もそんなキツい感じで僕の中に固定してしまった。
性格のキツい人はいくらでもいるが、
キツいけど一緒にいても不愉快でない人は少ない。
それを分けるのは僕の場合、筋が通っているかどうかで、
ただ感情にまかせて人に当たり散らすのとは違った。
とは言え八つ当たりの後、謝ったりしおらしくなった記憶もない。
筋も別に通ってなかった気がしてきた。
そうなると、感情的に八つ当たりするその空気そのものが
彼女自身にぴったりあっていた、とかなんとか、
そんなふわっとしたものだったのかもしれない。