「そうだ僕には何も見えてない。」

遠くから眺めたって、息遣いが聞こえるほど近くにいたって、
僕には最後まで何も見えなくて。
本編「春 Primavera」に登場する演劇部部長。
「僕」とは高校2年の時に同じクラスになる。普段は美少女風でクラスの人気者だったが、中身はゴリラ。時々とんでもない毒と暴言を吐く。が、基本的にはさばさばした、嘘をつけない女の子。
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オータニは思ったことを何でもそのまま言う。
いつも夢見がちで、ロマンだなんだとつまらない自分を何とか面白く見せようとする僕に対し、
身も蓋もない思ったままことを言い続けた。
卒業後何年かして一度だけ会ったことがある。
相変わらず悪意なくロマンなく身も蓋もなかった。
マキタの乳のことなんか考えたこともなかった。
きっと、だから僕とマキタは全然、全く、これっぽっちも上手くいかなかったんだと、
オータニは正しかったと、今にして見ればそう思う。
大学に進んだ後、一度だけオータニに会ったことがある。
名古屋で女子大生になったオータニは、髪が短くなったこと以外は
高校時代のゴリラのままで、
でもゴリラの癖に何だか、
何だか、
何だか。
もう。
オータニはマキタの幼馴染で親友だ。
マキタが寡黙な、何を考えているかよくわからないところのある
表情の薄い人間だったのに対して、
嘘のつけない、顔に全部出る人間だった。
僕はマキタも来ると思ってちょっとびくびくしていたのだ。
マキタはいつまでも特別な人間だった。
好きとか嫌いとか言う気持ちは既に忘れていたと思うが、
でも特別だったのだ。