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1:2020.9.1 (17:22)

「豊作と卒業アルバム。」

卒業アルバムなんて卒業してから一度も開いたことがない。
「学生生活」自体には何も楽しい思い出がない。

それでも遥か忘却の彼方に消え去ろうとしている美術部や
あの薄汚いねずみ色の校舎のことを、
もう一度ちゃんと描いておきたいと思って送ってもらった。

新米の炊けるよい香りがする。
クラス写真以外一枚も自分が写っていない卒業アルバムを見ながら、
漬物と干物で新米をもそもそと食べる。

2:2020.9.4 (4:56)

「サヨナラダケガ。」

井伏鱒二の名訳
ハナニアラシノタトヘモアルゾ
「サヨナラ」ダケガ人生ダ

は、井伏本人は照れくさくって気に入らない、と言っているにも関わらず、
センチメンタルのスイッチを押された後年の人々によって
口々に都合よく引用され、なんだかもうわけのわからない言葉になっている。

検索するとまず初音ミクの歌が出てくるあたり、
余計に僕をげんなりさせる。

僕は小学生の時、確かに子供だった。
そして子供の僕の話を、文章を、誰も本気では理解しようとしなかった。

「子供たちの気持ちを考えて」
そんなの嘘っぱちで、大人のお前の意見じゃねえかと僕は思う。

ちゃんと子供の話を聞きなさい。
子供は僕たちが考えているほど子供ではない。

3:2020.9.4 (21:19)

「何もなくていい。」

いっそのんのんびよりレベルの田舎なら逆に描くこともあるだろうが、
うちの実家はよくあるイオンと国道を中核とした個性のない地方都市だ。

暮らすのはほどほどに快適だが、
遠方の友人が来ても特に紹介するところがない。

特に事件も起きないし、イベントもない。
住人ものんびりしている。

舞台は平和そのものだ。
だから平和でなかったのは、
僕の心の中だけなのだ。

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