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1:2021.1.12 (23:50)

「僕は就職というものをしたことがない。」

就職などせず僕は最初からフリーランスで仕事を始めた。

と書けば格好いいが、違う。
就職できる能力がなかっただけの話なのだ。
そういう意味で、僕には「就職できなかった」という劣等感がいつまでもつきまとう。

先輩が卒業してからも、
僕は時々会いにゆき、
愚痴や大人の事情を聞くかたわらで、
夢のようなポエムのようなことを話し続けた。

そんなできの悪い弟のような僕を、
先輩はどんな気持ちで見ていただろうか。

僕が29歳で結婚するまで
先輩とのやりとりはほそぼそと続いた。

僕はやっとそこで大人になり、週に何日かとは言え、
先生という安定した職を得て、

ろうそくの灯が消えるように
先輩との関係は途絶えた。

3:2021.1.15 (23:03)

「褒められたいわけじゃない。」

男の料理はどうしても趣味的で、
何かにこだわりがあったり、うんちくがひどかったり、
そういうのはイヤだった。

でもうんちくは楽しい。

知らない人に自慢するのでなく、
同じレベルの人とうんちくを語るのは
とても楽しい。

食べ物は確かに人間性がよく出る。

4:2021.1.20 (22:10)

「冬のアトリエ。」

築何十年なのかもわからない、
当時でさえ幽霊屋敷のようなサークル棟の、
最上階に位置するアトリエは、
夜とても絵なんて描いてられる気温じゃなかった。

暖房は足元に置く、
小さな独り用の電気ヒーターのみ。

それでも僕はこのままでよかった。
先輩と並んで描ける、このままがよかった。

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