「沈黙の鐘が鳴る。」
医者に【あなたは●●だ】と病名を与えられただけで、心のどこかでほっと安心する程度の人間に、救われない人間の抱える痛みなどわかりはしない。
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医者に【あなたは●●だ】と病名を与えられただけで、心のどこかでほっと安心する程度の人間に、救われない人間の抱える痛みなどわかりはしない。
ごめんなさい。
元から僕は僕という閉じた狭い世界で生きていたいと願っていた。しかし嫉妬や痛みがそれらを全て狂わせる。
大きなことを語ろうとすると「どうしてそういうこと言うの?」という声が聞こえる。
それは、悪くない。
一休さんのどちて坊やのように「何故?」を連発し、嫌われた。だから僕は先に自分の話をする癖がついた。
それはそれでウザい。
僕は自分が退屈な人間だとよく知っている。
だから人を知りたがる。
「俺、昔は神童でさー」が口癖の神童くんに元から友達はいないが、「大人になると友達できねえー」を繰り返し、僕たちは黙り込むのだった。
思春期をサボると大体こうなる。
20代でしなかったことは30代でも40代でも出来はしない。
ついにストリートビューもこの地まで来ていた。
「世界一周で人生観変わった~」みたいなのがひどく嫌いで、そういう雰囲気になりそうだから描かなかったんですが、しかしそろそろ描いておかないと後悔しそうで。
さみだれちゃんは一言も話さない。
故に彼女から聞こえる言葉は僕に対する僕自身の言葉である。
コツコツと足音がして胸がときめくが、
たいてい来るのは美術部顧問の先生。
先生がにやにやしながら「マキタかと思た?」と言う。
何やこのおばはん帰れ、と僕は心の中で毒づく。
そんな小さなことだけ覚えてる。
とにかく周りの人間がしゃべっている内容が一つもわからず置いてけぼりの上、色紙代返せとか言われていい思い出が一つもない。
マエダのサークル本は一冊も売れなかった。
向かいの人も一冊も売れなかった。
どこで僕たちは間違ったのか。
僕の有するあらゆる言語の知識を持ってしても何語だかさっぱりわからないんだ。
納豆から突然変異で生まれたんじゃないのかとの疑いが強まる。一族みな同じ顔だし。