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「電話。」

携帯電話がない頃、
電話は家の黒電話か、走って15分かかる公衆電話しかなかった。
夜8時を過ぎると家の玄関はまっくらだった。
家族は渡り廊下を渡って遠く離れた居間にいるので
何の物音もしない。
闇の中で話していると、
自分が周りの闇に溶け出してゆく、
妙な感覚に襲われる。
あの感覚を上手に言葉にしたいといつも思うのだが、
今もって的確に表現できる言葉が見つからない。



