「アトリエ。」

2025.1.12 (11:41)

盆地である京都の暑さ寒さは厳しく、
築何十年だか誰もわからないこの建物は
あらゆる室内に隙間風が吹いており、とてもじゃないが
絵なんか描いてられる環境ではない。

アトリエは火気厳禁であることもそれに拍車をかける。
広大なアトリエにたった一つ、小さなストーブだけがあった。

真冬の制作は、日中だけにするか、
この小さなストーブでなんとかだましだまし暖を取るかの二択だ。

いきおい、ストーブの近くで話をする機会が増える。
いろりを囲んで昔話をするようなものだ。

自分たちで作った木の長椅子の端と端に座って、
背中合わせに話をしたりしなかったりする。

物音はしない。
時々ライターのカチッという音だけが背中越しに聞こえてくる。

僕はそんな時間が好きだった。
そんな時間を美しいと思った。