「アトリエ。」

2024.12.19 (1:58)

もう先輩がどんな声をしていたのか、あまり思い出せない。
いつも僕ばかりしゃべっていたからかもしれない。

高くも低くもなく、
速くも遅くもなかった。

「ん?」という気のない返事だけが
記憶に残っている。

先輩はたくさんのことを教えてくれたが、
先生のように教えてくれたわけではない。
本人もそんなに僕に影響を与えたとは思っていないだろう。

勝手に僕がついてまわって、
先輩の読むもの、見るもの、聞くものを
真似していただけの話だ。

幸せだった。
誰かに強い影響を受け、盲信することが。

先輩以降約30年、僕はそんなにも誰かを盲信したことはない。