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ただ、あの最初の「知らないから」享受できる強力な幸福を、
永遠に繰り返したいのがファンタジーの世界であり、
妄想の世界だとすれば、
僕はそれでも気まずい沈黙を背負って、
退屈な日常を二人で退屈に生きていくことを選ぶ。
そうやって長い長い退屈の果てにようやく、
ああ、これでよかったのだ、
と思う瞬間がやってくる。
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ただ、あの最初の「知らないから」享受できる強力な幸福を、
永遠に繰り返したいのがファンタジーの世界であり、
妄想の世界だとすれば、
僕はそれでも気まずい沈黙を背負って、
退屈な日常を二人で退屈に生きていくことを選ぶ。
そうやって長い長い退屈の果てにようやく、
ああ、これでよかったのだ、
と思う瞬間がやってくる。

枝くんは同じ芸術学専攻の同期である。
僕は1浪、彼は2浪だったが、
のちに4浪であることが発覚した。
発覚したところでどうということもなかった。
彼とは相当長い時間を一緒に過ごしたが、
芸術や美術に関心を見せたことが一度もない。
彼が感情を見せたのは、共に留年した5年生の時、
大三元字一色のダブル役満を上がった瞬間のみである。
ずっと美術部に在籍していたが、一枚も絵は描かなかった。
氷河期の就職活動中、実家近くの火山が噴火、大学を辞めて北海道へ帰郷した。
その後、彼に会いにいった後輩が、
「枝さんは聖書を売る人になっていました」
という情報を与えたきり、行方は杳としてしれない。
あれからとうに20年が経つ。
生死も不明であるが、仲間内で集まると必ず彼の話になる。
そのたびみんなで「あいつ探そうぜ」と盛り上がるが、
誰も探さない。
僕の数少ない同性の友人である。

僕はどちらかというと自分の気分を信用できないので、
必要以上に計算や打算の上、それらしく自然に見えるようにふるまいたい、
と考えている方です。
だから「天然」という人柄とは正反対の場所にいる、と
自分では思っていました。
でもある時奥崎に
「君は一人でくるくる4、5回転した意味不明な先読みを、
予言のポエムみたいに言うから
ものすごい天然に見える」
という評価をくだされ、ショックを受けた思い出があります。
僕はいつも素直がいい、素直が一番だと繰り返します。
それはネットでもリアルでも同じです。
素直になれなかった自分を
お腹いっぱい知っているからです。

1センチ四方のなんだかわからない写真を見ただけで、
描き方が変わった。
不思議だ。記憶は。