だらだら読める一覧ページ

旧サイトのようなブログ形式でだらだらと読みたい場合はこちらのページをブックマークしてください。
新着から過去に向かってすべての投稿が掲載されます。

「転校生。」

ムロイはそう遠くない町からの転校生だった。
理由は絶対に話さなかったから、聞いたことはないし知らない。

転校生は無理して明るくふるまって馴染もうとするタイプと、
空気になって目立たないようにするタイプがいたが
ムロイは特に気の毒なくらい周りを気にしているように見えた。

見えたのであれこれとおせっかいを焼いた。
おせっかいだった。
男だからかどうかはわからないが、
結局もてあましてマキタとオータニに投げた。

という顔を僕はした。
だからムロイはそんなことを言った。

いつも僕は余計なことをする。
優しい人間になりたかった。
そう思えば思うほど、ぎくしゃくした。

「正しい季節。」

抱えているものが何であれ、抱えているにおいは何となく伝わる。
そうやってあらかじめにおわせておかないと怖くて話せない人と、伝わってると思うと怖くて話せない人といる。色々いる。

僕にとっては僕に伝わるそのにおいが恋愛のきっかけだった。
だからそのにおいを第三者が暴いてしまう時代とは相性が悪い。

マキタがなぜそんなことを言うのか。
この少し前までこの時の僕と同じ立場だったからだ。
恋愛には種がある。種明かしは自分の手で行う方が救われる。