「記憶を描くという強い衝動。」

2025.3.17 (1:43)

ある脳の障害によって、何十年経っても見たものを見たまま描ける特殊な能力は存在する。
それが羨ましいかと言われると、わからない。
見たものを見たまま描く行為に自我はあるんだろうか。

誰でも鮮明に覚えている光景がある。
鮮明に覚えているのに、絵で描くと下手すぎて誰にも伝わらなかったりする。
あれを不思議だと思ったことはない?
僕は子どもの頃からずっと不思議だった。

頭の中にあるものを形にするには技術を習得する努力が必要だ。
でも感動があり、記憶があり、そこからスタートすれば技術の習得は大した問題ではない。

技術は必ず劣化する。
思い出は劣化しない。
むしろ美化していく。

美化、つまり美しいものへと変わっていくなら、
それが一番描かなければいけないものだと思う。
僕は美しいものだけが好きだからだ。