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「セキグチ。」

漫画やアニメのように女の子がこちらを向いて微笑んだ瞬間に対してドキッとしたことはほとんどない。

いつもドキドキするのは人が難しい局面に直面し、虚勢を張る余裕もなくなった時の真顔だ。

僕は素の真顔を一番美しいと思う。

年齢や経験と共に段々素の顔を抑え込む能力が高くなっていく。

ちらりと見せたその俯いた表情を、僕はいまでもはっきりと覚えている。

「凛。」

マキタと同じクラスだったのは2年生だけで、
3年になると別々になりました。

いやあ残念残念、なんて美術部ではおどけていましたが、
どこかでちょっとほっとしていました。

僕は自分をもてあましていました。

ああ僕は迷惑だ、迷惑な存在なのだと
勝手な独り言を周辺に振りまいて
その癖どこかでマキタの視界に入ろうとする浅ましさを
許せない、

そんな自家撞着にくたびれていました。

山から吹き下ろす強い風が
僕たちの会話をいつも途切れ途切れにしました。