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「そんな日。」

入院した時から7年経つ。
その間、入れ替わりの激しい大病院の割に、
僕の主治医はずっと稲荷のままだ。

7年も経つのに稲荷のことは何も知らない。
そりゃ雑談なんて一言もしないからね。

何も知らない人を7年も知っているというのは
なんだか不思議な気分でもあるし、
医者とは不思議な商売だとも思う。

色々大変なんだろうな。
でも僕は彼女について何も語る言葉をもたない。

「恋愛者たち。」

恋愛者は時々自分ですら想定していなかった
アンビバレンツな行動をする。

後から考えれば、中途半端の苦しさや重さに耐えかねて、
早く誰かと上手いこといってくれというような
稚拙で単純な逃避なんだけれど、
僕にはそれを自覚することができない。

その一方で、
自分の気持ちを自分自身で追ってコントロールできてるような
状態を恋愛とは呼ばないと僕は思う。

恋愛者たちの先にあるのはどこへたどり着いても、ただ後悔。
そしてその後悔を背負ったバッドエンド。

僕はただ君が幸せになってくれれば、なんて
かったるい醜悪な嘘を誰に向かってついたのか。

僕もマキタも自尊心が充満していた。
そして僕だけが偽物だった。

「ブーメランは必ず命中する。」

嘘と言っても政治の闇とかそういうのでなくて、
「日常の中でちょっとした瞬間にごまかしてしまう自分の弱さから来る嘘」
を自分も他人もどうしても許せず、
執拗に潔癖に断罪しようとした僕の季節は、
あれは少しも格好いい思い出ではなく、
ただのブーメランだった。

そこは決して美化してはいけない。

ただそういうしみったれた季節を経ていなければ、
僕は本気で「この雑魚が」などと思っている大人になっていたかもしれない。

大丈夫、なんとかなる。
キルケゴールの言う通り、今必要なのは安心と安定ではなく可能性だ。