2024.4.1
2021年7月69P
ページ内の表示数
「うなじ。」
先輩は僕にタバコを教えておいて自分はすぐやめたし、
それを引きずって20年やめられなかった僕も、
入院を機に吸わなくなった。
でもタバコを吸っていなかったら
出会わなかった風景があったことは確かで、
僕は今もそれを大切に胸の内で抱えている。
「夏の雲。」
もう長い間こんな雲を見ていない。
「スイッチ。」
きれいな言葉を使おうが汚い言葉を使おうが、
「自分で気づく前にただちに人に言えてしまう」ことが
今の蔓延する寂しさの正体だと僕は思っている。
「微睡むことも出来ずに。」
不安で眠れないのもつらいものですが、
痛みで眠れないのはやはりそれよりずっとつらいです。
「オガワくんの思い出。」
オガワでさんざん慣れていたから、
同じ病気のぴくちゃんは平気だった。
「ポツリと。」
「さう あれはうそだ
血によって 傷によって 毒によって
愛をはかった
あのつきつめた愚かさは うそだ」