2024.1.19 (2:31)
イヴ・タンギー(1900-1955)はフランスの画家。
正規の美術教育を受けたことはなく20代前半から独学で描き始め、
ダリ、キリコらシュールレアリズム運動の画家として
「無意識」の世界を描き続けた。
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僕は高校生になって初めて美術部に入り、絵を描き始めた。
理由は単純で、このサイトに頻繁に登場するマキタを描きたかったからだ。
それまではもっぱら観る専門で、自分で絵を描こうなんて思ったことはなかった。
その思春期の恋愛はさておき、観る方はシュールレアリズムに興味があった。
16、7歳と言えば無意識とか潜在意識とかイドとか、
ユング的な精神世界のありように関心を持つ季節だろう。
小学生の頃好きだった小説に筒井康隆の七瀬シリーズがある。
主人公のエスパー・七瀬は相手の思考を覗くことができる。
その中に芸術家の頭の中を覗く回があって、
その世界は意味のないガラクタがどこまでも続く荒廃した風景だった。
初めてタンギーの絵を見た時、その小説を思い出した。
無意識のガラクタだけが静かに広がっている世界だ。
タンギーはダリほどの知名度はない。
知る人ぞ知るというほどマイナーな作家でもない。
ダリの世界はわかりやすい。無意識ではなく自意識の世界だ。
タンギーの絵は何が描いてあるのかよくわからない。
でもなんだか懐かしいような虚しいような感じがする。そこが好きだった。
小説ではガラクタのちらばった画家の頭の中に、
突然ピンク色の官能的な形が生まれ始める。
それは主人公の魅力的な女性・七瀬を観た時に画家に生まれた
エロス(要は欲情)であり、僕はそのあたりの表現を
実に気持ち悪いと思った。
僕はエロ的なものが好きでない。
多分七瀬シリーズに登場する男たちが常に上辺では紳士的な顔をしながら
頭の中ではあらゆる卑猥な妄想で七瀬を犯そうとする、
あのリアルな描写が本当に気持ち悪かったからだろう。