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「『察して』はだめだよ。」

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「美術室の机のかどに腰掛けていた。」
と思い出を言葉で書くのはたやすい。
でも自分の頭の中にだけある映像を
自分の手で絵に描くのはなんと難しいことかと思う。
頭の大きさや手足の長さは何百枚も描けば
次第に慣れて人間の形になっていくのだけれど、
あの時間、あの空気を描くには画力が圧倒的に足らない。
だからやめられないでいる。
そんな理由で続いている。


後ろ姿とは言え、自分が描かれた作品を見て
マキタはどう思っただろう。
少なくともいい気分ではなかったに違いない。
そんなことは僕自身にもよくわかっていた。
でもやっぱりまだ消せない感情が胸の奥で燻っていた。どうしても。
そのジレンマが高校生の僕の恋愛だったと思う。
何もかもが相対的に捉えられ
一瞬で自分の立ち位置が情報として決定してしまう今は
このような恋愛は
ただの自分勝手な気持ち悪さとしてしか理解されないだろう。
そして
僕たちのように互いを受け入れることも
完全に否定することもできず
モヤモヤとした関係を続けることも
もうないのかもしれない。
それは果たして
幸福な世界なんだろうか。