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「燃える日。」

気がつくと踏切を描いている。

僕たちの乗る近鉄電車は
名古屋に向かって伊勢湾の海岸線を走っており
駅から降りて数分も歩けば海に出る。

冬、鈴鹿山脈から伊勢湾に向けて吹き下ろす風は
鈴鹿おろしと呼ばれ、
僕たちはその強い強い寒風の中を
話すこともなく無言で歩いた。

空が燃えている。

マキタは嫌な顔をしたりはしなかったし、
嬉しそうな顔もしない。

「杉ちゃんを描きながら。」

杉ちゃんも文学部だった気がするけど忘れた。

杉ちゃんにも僕にも同じような痛々しい
リリックな部分があって、
他の人が聞いたら会話になっていないような、
ポエムのごときふわふわした会話をしながら
杉ちゃんを描く僕と
描かれる杉ちゃんとで
果てしなく「核心に触れない話題」を繰り返していたと思う。

杉ちゃんは時々ふと目が覚めたように
僕を詰り、つまりその言葉で自分自身も詰った。

「自分に自信がないんですとか口で言っちゃう女はゴミだ」
みたいなことをよく言っていたが、
それは自分のことじゃないのか、と言うと
「私は先輩だぞ!」とよくわからない怒り方をした。

歳は同じだった。
学年は杉ちゃんが一つ上だった。

僕が描いてあげた絵は
きっと全部火にくべただろう。