だらだら読める一覧ページ

旧サイトのようなブログ形式でだらだらと読みたい場合はこちらのページをブックマークしてください。
新着から過去に向かってすべての投稿が掲載されます。

「誰だって自分の話をしたいのだ。」

この時車内でかけたジャズはビル・エヴァンスだった。
ナナさんから何の話を聞いたかは思い出せないが、それだけは憶えている。

さんざん僕を詩人だポエムだとからかう癖に
ナナさんの手紙もいつも湿ったポエムで。

手紙の宛先が田辺になってるから、
僕が21、ナナさんが23の時だろうと思う。

僕は一年中誰かを車に乗せ、タクシーの運転手みたいになっていた。

ナナさんとは趣味がよく合った。
趣味というより見えている世界がよく似ていた。
ナナさんの手紙にもそう書いてある。

時々は人の心に一歩踏み込む勇気が必要になる。
だけど踏み込んで白日の元に晒し、暴き、裸にすること、
それは俗悪だ。
そんなことで得意がっているうちは誰にも顧みられない。

誰だって自分の話をしたいのだ。
その話が始まるまでジャズでもかけて待っていればいい。

「青春モノクローム。」

仲がいいと思っていたのは自分だけで、
ほんとうは嫌われているんじゃないか。

なんて気持ちは大人になったところで
消えません。

「まぁいいか」
と思うのが早くなるだけです。

「ものすごく大事」と思うことが減って、
「どうでもいい」と思ったことがそうでもないことを知るからです。
白と黒が減ってグレーばかりが増えていきます。

だからまれに「ものすごく大事」、つまり感動に出会うと
一気に気持ちは30年前に戻ります。

僕はそういう気分が好きでね。
モチベーションなんてそれで十分です。

いい歳してとかおとなげないとか
そんな自分自身の言い訳を吹き飛ばしてくれるのは
どれだけ自分が人間を好きになってそれを我慢しなかったか、
その経験と思い出だけだ。