授業中に机に向かってノートを取っていたマキタは、着ている制服の左袖に一匹のカメムシが留まっていることに気がつく。マキタは騒ぐことなく虫を手の甲から指先へと慎重に這わせ、席のすぐ横にある窓枠の外へと静かに逃がしてやる。 静かな教室内では、ハイチ革命の歴史について教科書を淡々と読み上げる教師の落ち着いた声が響き渡っている。隣の席に座っているハセガワは、口元に鉛筆をくわえながらだらしなく頬杖をつき、ぼんやりと授業を聞き流している。その無防備な様子を横目で見たマキタは、ハセガワの真似をするように自分も鉛筆を横向きにしっかりとくわえる。マキタは机の上に覆いかぶさるように姿勢を低く沈め、悪戯っぽい笑みを浮かべながらハセガワの横顔を見つめる。


