本編(91p)
I.プレリュード
II.アルマンド
III.クーラント
IV.サラバンド
V.パスピエ
VI.ジーグ
VII.エピローグ
VIII.村木ハルカ
セリフ
1ページ目
- 僕は大学1年生、村木は高校2年生、あの午前3時の公園で、村木はずっと笑っていたが本当は少しも笑っていない。
- 青春ノンフィクション
- 村木。
- Ⅰ.プレリュード
2ページ目
- 入学式前の3月。引っ越しを終えた僕は大学周辺を散策する。
- 「この辺も田舎だな...うそを交えねえ。」
- 「お、バッハ。」
- 「平均律1巻21番変ロ調プレリュード。」
- 「超うまい...」
- 「ん......?これこんな曲だっけ...」
- 「・・・・・・」
- 普段そんなことしないけどどうにもこの時だけ気になった。
- 効果音ピンポーン
- 「なんスか!」
- 村木17、高校二年生。
- 「はーいバタバタバタ」
3ページ目
- 青春トンフィクション 51 「村木③。」
- 「突然すいませんピアノの音が聞こえて気になって」
- 「あー」
- 「見学っスか?どうぞどうぞ見学とりあえずまあ中にどうぞ」
- ピアノ教室だったか。なるほど。
- 「ここまだ看板も出してないんスよねー。始めたばっかっス。先生今ちょっとお昼で。」
- 「どうぞ。どうも。」
- 「早速何か弾きます?いえ」
- 「じゃああたし練習してていいッスか?受験生なんスよね。どーぞどーぞ」
- 高校生か。ずいぶん出慣れてる。
- 「さっきのバッハ。うまいなあ…。うまいなあ…。あんな風に弾けたらな…。」
4ページ目
- 瀧先生が戻ってきた。
- 「まぁまみ まぁまみ いらしい まぁまみ まぁまぁ ああ まぁまぁ」
- 「何か弾いだ。」
- 「まぁまぁ。。。だわ。」
- 「はいあなた我が教室に入会しなさいいいですねいいですね?ありがとう。」
- 「でもって急だけど来週合同演奏会&コンクールがあるのでそれに参加するいいですね?ありがとう。」
- 瀧先生の勢いに屈したということもあったが、
- 「村木さん…か。あと上帰。」
- 村木のピアノの何にザワザワするのか、もっと知りたいという気持ちが強かった。
- 「…わかりました。」
- 「やった、先生 初男子よ 男子」
5ページ目
- 村木は春休み、
- 「いや」
- 効果音バーン
- 効果音ドーン
- 「あそこは スカね?」
- 「おはよう。」
- 「おはよっス。」
- 効果音バーン。
- 僕は大学の入学式前。
- 毎日教室に行き、朝から晩まで一緒にいた。
- 土偶は忙しく、いなかった。
- 効果音ぴょぴょぴょびょびょ
- 頻繁なボケベル。
- まあ女子高生
- そんなもんだろとも思いっつ。
- 思いつつ。
- 効果音ダッ
6ページ目
- 演奏会当日。 …やっぱり雨。
- 土偶のロぶりから、 村の集会所レベルだと思いこんでいた。 ものすごく立派なコンサートホールだった。 ※インターネットはまだない。
- 「マジっスか。」
- まさかこんな大規模だったとは…
- 「いいホールでしょ。」
- 「言ったら出ねぇだろ。ギッ、ギッ」
- 「おはよございまス!」
- 「何、その帽子。」
7ページ目
- 「はい!」
- 「はいー!」
- 「いぬの人ー」
- 「いぬの人ー」
- 「なるほど。」
- 「並ぶっスよー」
- 効果音わんわん
- 効果音わんわん
- 「顔色悪いスね。」
- 「いやいつもはこんなんじゃないけどオレなんかとうなってだった」
- 効果音ガタガタガタ
- 効果音ガタ
- 「一方僕はだめだった。」
- 効果音カリカリカリカリカリカリ
- 「じゃーじゃー」
- 「まーまー こっち来るっス。」
- 効果音リバースしちゃうぞ☆
8ページ目
- 「タイ、曲がってるッスよ。」
- 「ほんとだ。」
- 「ハイ、じゃあ……」
- 効果音ぐっ
- 「それ、あげるっス!」
- 「どうスか。」
- 「……」
9ページ目
- 「わんわんです」
- 「わんわんだ。」
- 「やけくそになると楽になるもので、」
- 効果音わんわん
- 「わんわんでた、」
- やけくそで弾けた。
- 南北高等学校2年村木さんによる...
- 「...続きましては、」
- こういう時って
- 「ありがとうがんばってって言えばいいだけなのに」
- 「「ごめん」って言ってしまうのは何故なんだ。」
- 「おいコラ。」
10ページ目
- 村木のピアノは男らしい。
- 明るくて、歯切れがよくて、猛烈なスピードで、ただ何だかザワザワする。よくわからないけれどザワザワする。
- 「最近ずっとダメなのよねー何かあったのかしら。」
- 「えっ、そうですか?」
- それに惹かれた。
- 「全然ダメねあの子。」
- 効果音いー加減脱げやコラ。雑。
- ただ僕は、まだ村木のことも、村木のピアノのことも、僕自身のことさえ、何もわかっていなかった。
- 土偶の話など知ったことではない。
11ページ目
- 「全然だめだったスね。。。多分受験も。。。。。。」
- 「レイニー君 あなた家庭教師!」
- 「村木さん 受験でしょ あなたこれから大学生でしょ。そうしよう。ありがとう。」
- 「お勉強は」
- 「ね、村木さん。」
- 「逃げるな。」
- 「イヤ!」
- 「村木は、」
- 「大人なのか子供なのかわからない。」
13ページ目
- 痛々しい高校生の、
- 「ここそそしゃがって昆虫が。」
- 「関係ない外野は黙ってろ。」
- という態度を猛省、きれいさっぱり改め、
- 「やったせ」
- すぐ終了し
- 新歓コンパ
- 「僕の楽しいキャンパスライフは」
- 「先パイ虫だね。」
- 改まらず、
- 「レイニー君、全然わかんないス。」
- 「どこが。」
- 「全部。」
- 「そいつは景気いいね。」
- 行き詰まった。
14ページ目
- 効果音ピッ ピー ポン
- 効果音たっ
- 「おっと。」
- 効果音ぴよ ぴよ ぴよ ぴよ
- 「大変だな女子高生。」
- 「いやいや大学生様ほどでは。ハイ。」
- 「イヤミかっ」
- 「シェーッス。」
- 「そー んなんじゃないッス。今そんな余裕ないッス。」
- 問い詰めたい気もしたけれど、村木は自分のことを話さない。
- 「そんなに一体何を打電してんだ。つきあいたての彼氏か?」
- 「また。。。すまんッス。」
15ページ目
- 「レイニー君はどうなんスか?彼女とか。」
- 「……ああ……」
- 「いや、すいません。」
- 「それどころではなく。」
- 効果音絶賛四面楚歌中♪
- 「じゃ、大学で何の勉強してんでスか?」
- 「すいません、全く自分でもわかりません。」
- 「あのさ、正直村木は音大の推薦受かると思うんだ。このままなら。」
- 「あざース。やっぱりピアニスト目指してんの?」
- 「女の子みたい。」
- 「女の子っス。」
- 「ん……」
- 「そうスね。でもまぁ難しいと思うんで、ダメなら・・お花屋さん。お花屋さんでバイトから。」
16ページ目
- 高校生活最後に牧田が言った言葉を僕はまだ忘れられないでいた。
- 「ごめんね、私は君のことそんなに好きじゃないんだ。」
- 村木は素直で明るくて、
- 明るいけれど、
- その分どこかに人を拒む壁があって
- 「…怖かった。」
- 「たまには連弾でもどうっスか?」
- …でも僕は、どうしようもなく楽しくなってしまったんだ。
17ページ目
- 「来月、我が教室で親睦パーティーをします。」
- 「だから 上級生三人で内容考えて。 ハイお金。」
- 「お金。」
- 「わぁお金。」
- 「お金。」
- というわけで、
- ファミレス会議。
- 教室で二人きりが多いから、 他の人がいるとちょっと新鮮で、 ちょっと緊張する。
- 森ちゃん(高一) バイオリン志望
- 「あ、村木は他の人間に接する時こんな感じなんだ。」
- 「へえ やるね村木ちゃん。」
- 「包気づきやがって?」
- 「やめろ」
- そんなことも何だか嬉しくて、会議はまるで進まない。
18ページ目
- 「レイニーちゃんさ」
- 「……。」
- 「……」
- 効果音ぴよぴよ休憩。
- 「うーーーん。」
- 「うん。」
- 「そっか。」
- 「村木ちゃん」
- 「好きでしょ。」
- 「わっかりやすいよねー。ちょっとびっくりするくらい。まあいいけど。」
- 「でもさー」
- 「あの人、色々難しい人だよー。中途半端なのやめてよね。」
- 「ふうん、と思った。それよりここでうんと言ったことで、僕はもう後戻りできなくなる。」
19ページ目
- 「何となく自分で言った、」
- 「ただいまドー」
- 「「うん」の一言で」
- 「せまいせまい」
- マンガのようにドキドキしたり
- 次ガッピとかどうスか。ヤッパ着ぐるみで連弾。
- 「僕は自分に気がつく。」
- 「村木ちゃんの悪口。なにそれひとつ」
- たった5分で世界は明瞭に意識は簡潔に。
- 「よしよし頭おかしいの?」
- 頬が赤くなることはなく
- 左まぶたの上に小さなほくろがあることに気づいた。
- 「あごの下に、薄く小さな傷があることに気づいた。」
- 僕の世界は拡大した。
- 「何が食べましょ」
20ページ目
- 人を好きになったり嫌いになったりするたび、熱を出して寝込んだ。
- 「大丈夫?」
- 時間も日付も感覚がなくなっていく。
- 携帯もパソコンもない電話もない時計もカレンダーもない連絡手段は手紙だけ。
- でもどうしてもその一人っきりの期間は必要だった。
- 「夢・・・」
21ページ目
- 時間の麻痺した中でじっとしていると、
- 僕の頭は勝手に回想を始める。
- そこでやっと、自分が何も知らないことに気づく。
- 「あれ…」
- 言いたくって、また具合を悪くする。
- 色んなことを言いたくって、
22ページ目
- 「書けた手紙は夜中のうちに出しにいく。」
- 「朝が来たら、もう出す勇気はなくなるから。」
- 効果音えい。
- 「でも大抵、」
- 効果音ビリッ
- 「……。」
- 「その場で一行に書き直して投函した。」
- 「少し話をしたい。しにー。」
23ページ目
- 気分も平静に戻った頃、返事が来た。
- 「何を話したいんだっけ。」
- 熱が引いて
- 「8日PM6:00 東公園ス! by 杯木」
- ああ、懇親パーティーとか家庭教師とか何の連絡もせずに失踪してしまった。…謝らないと。
- 「何日くらい経ったんだっけ。」
- 「あ。…やあ村木。」
- 効果音ゴッ
- 効果音ぺっ
25ページ目
- 「……で?」
- 「……で?」
- 「いや ひどくないッスか。」
- 「一ヶ月も急に どこで 行方不明とか 何してたん スか。」
- 「うーん」
- 「お前のこと 考えたら熱出て 寝込んだ。」 とは言えんな。。
- さすがに。
- 「……ごめんなさいね、 風が僕を呼んだんだ。 よくあることなのさ。」
- 「ハァ?」
- こういう時 必ず失敗する。
- 効果音ダスビダーニャッ
- 効果音つとめて あかるく
26ページ目
- 「……まあ怒ってはいないんスよ。 でも急に連絡なくなったら誰だって心配するじゃないスか。」
- 「教室の入会カードの住所に一回手紙送ったんスけど戻ってきたっス。」
- 「あ、アレでたらめ。」
- 「何故そんなことを」
- 「なんとなく。」
- 「レイニーくん、割と一緒にいたと思ってたけど、」
- 「全然なんにも知らないもんでスねぇ。」
- それは僕も一緒だったんでスよ。
- 「だからこうやって来たんでス。」
- 「村木。」
27ページ目
- 「では本題に。」
- 「ええと、そうだねぇ……」
- 「どう言ったものか」
- 「さて……なかんずく……」
- 「まず、急にいなくなったことはきちんと謝罪したい。」
- 「とても申し訳なかった。」
- 「……それはもういいッス。」
- 「あの…何も考えてないッスね?」
- 「寒い!」
- 「ファミレス!」
- 「レイーくんのおごりで。」
28ページ目
- 「おなかすいてたのね。」
- 「ごちそーた」
- 「懇親パーティーですか?まあ何か歌って踊って。」
- 「そんな感じ。」
- 「あ、森ちゃんが激怒してた。」
- 「先生割れた。」
- 「どこいったアイツ…」
- 「割れて…?」
- 「そ…そう…?」
- 「…って……」
- 「そういう話じゃないよね。」
- 「何を話したらいい?」
- 効果音うにょ
29ページ目
- 「……もう遅くなったし 家の人心配しないかな。 話はまた今度でも…」
- 「本当に今そう思ってる?」
- 「あれは適当?」
- 「……」
- 「思ったこと 言ってよ。 そのまま。」
- 適当なこと言われるとすぐ不安になる。
- 「家の人なんか いない。」
- 「……何でもいいから 適当じゃないこと、 話してよ。 頭いいんでしょ?」
- 口調が変わっていく村木に、不思議と僕は違和感がない。
30ページ目
- 「......村木は自分の弾くピアノ、すき?」
- 「何も考えてない。」
- 「...そう。」
- 「僕は村木のピアノ、とってもすきなんだよね。」
- 効果音大ファン。
- 「自分のピアノ?」
- 「知らない、そんなの。」
- 「僕が話したかったのは、それだけだよ。」
- 「適当言うなってんなら、」
- 「うん。」
- 「そうなの?」
- やっと言えた
- 「...........」
- 「..........」
31ページ目
- 「……ふうん」
- 「お説教とかしないの?」
- 「男の人みんなすぐ怒るよね。私がイライラしたり態度変えると。」
- 「説教するほどお前のこと知らん。どんな奴とつきあってた。」
- 「説教して欲しいの?だったらこらーとか言うけど。こらー。」
- 「それお説教なの?知らんよ。」
- 「まあなんだ、」
- 「僕も好き勝手にしたいので」
- 「お前もわーってしたいならわーってしてくれ。」
- 「どってことない。」
- 「というわけで……帰りますか。」
- 「うん。」
32ページ目
- 青春(ハーフ)フィクション『村木正』-8
- 私こないだ東西音大ピアノ科に無事、推薦合格しまして。
- 「あっ言い忘れた。」
- 「その節はドーモドーモ」
- 「それはそれはドーモドーモ」
- 「いやあその時期......失踪とか」
- 「もういいよそれは。」
- 村木の口調は、
- 「ブランコのっていい?」
- 「ッスに戻らなかった。
- 君はそうやって、人との距離を縮めるのかな。
- 僕は、牧田との距離を縮められなかったんだ。
33ページ目
- 「ん?」
- 「村木。」
- 「さっき、 "家の人なんかいない。" って言った。」
- 「……あ、うちね…お父さんいないの。お母さんもまあ、帰ってきたり来なかったり。」
- 「いわゆるよくあるカティのジョーってやつ。色々、」
- 「なぁに?急に私に興味わいた?」
- 「そう。」
- 「ね。」
- 「ちょっと思いっきり押してみて。」
- 「そりゃ。」
- 「まあ……うん。」
34ページ目
- 「じゃあはい せーの」
- 「せーの」
- 「はっ」
- 「あのねえ」
- 「今ピアノ弾きたい。」
- 「すごく。」
36ページ目
- 「・・・いいね、僕も弾きたい気分。」
- 「でしょ?」
- 「とは言っても今夜中だし」
- 「教室なんか開いてないだろ。」
- 「じゃーレイニーくんちでいい。」
- 「えー・・・自分ちにもあるだろ。帰って弾こうよ。」
- 「ぴアッ!ぴアッ!家どっち?」
- 「あるけど消音機能ついてない。夜中はムリ。」
- 「だからいいじゃん。」
- 「・・・・・・んー、まあいいけど、じゃあこれ着てくんないか。」
- 「えー!なんでそんな重いコートやだ。」
- 「目立つんだよ制服。これだめな状況だろ。」
- 「誰もいないよ、こんな夜中&田舎。」
- 「いるんだよウーウー言う車とか。僕くわいそ。」
- 8・・・はなみず垂れてんですよ。
37ページ目
- 農道を歩くと、僕は何度も何度も同じことを思い出す。
- 無表情で、考えていることが全然わからない牧田
- 「俺はお前がキライではない。」
- 「知ってる。」
- 「僕は一人で盛り上がり、一人で勘違いをし、一人でスベって本当にバカみたいにしたい。」
- 「ごめんね。私そんなにスキじゃない。」
- 「知ってるウソ。」
- 一人上手はとてもしょっぱいし、すっぱい。
- くるくると笑ったり怒ったりわがままになったり、わからない。
- 牧田は本当は僕を嗤っていただろうか。
- 村木も本当は僕を嗤っているだろうか。
- 効果音ピアーン
38ページ目
- 「おー。」
- 「ホントにピアノしかない。どうやって生活してんの。」
- 「うん。」
- 「……じゃあ」
- 「僕はしばらく外をうろうろしてる。好きなだけ弾いていいよ。」
- 「下心を見透かされるのがイヤで、」
- 「えーなんで。一緒にいたらいいじゃん。」
- 「それは色々まずくない?」
- 僕はそんなことを言う。
39ページ目
- 「もう、……」
- 「めんどくさいなあ。」
- 「ピアノすきって言ってくれた。」
- 「いつもさ、雑とか適当とかでほめられたことあんまりないの。」
- 「もっといっぱいほめてよ。調子に乗るくらい。」
- 「ハイ。」
- 僕のピアノを村木が弾いていて、全然別のピアノみたい。3つのヴァイオリンと通奏低音のためのカノンとジーグ二長調パッヘルベルのカノン。
40ページ目
- 「同じ旋律を」
- 「僕は後ろから追いかける」
- 対話。
- 何度も 何度も 何度も 何度も。 たとたしく。
- 「スッキリしたー」
41ページ目
- 「.......なんか」
- 「なつがい 一日だったね。」
- 「久しぶりだよ、 こういうの。 わるくない。」
- 効果音ふぅーっ
- 「ほぃ」
- 「じゃあ おやすみ」
- 「寝袋の中で、 僕には 今夜の現実感がない。」
- 「全部本当っぽいし、 全部嘘みたいだった。」
42ページ目
- 効果音むく
44ページ目
- 「あ。起きた。」
- 効果音チチチ・・・
- 村木はもうあまりにいつもの村木で、
- 「おうちと洗濯機と捨てたパーカーよ。」
- それがまた、僕から現実感を奪う。
- 「・・・ていうかおなかすいたよう。お酒じゃない。」
- 「学校は?」
- 「もう自由登校。」
45ページ目
- 農道。
- 「お腹すくと腹立つよね。」
- 「いや全然。」
- 昨日とちっとも変わらない距離。近づいてもない。遠さかってもない。
- 「そんなもんかな。」
- 「…手、つないでいい?農道が終わるまで。」
- 「えー私と?今?なんで????」
- 「…なーんてねっ」
- 「うりゃ、喜べ。」
- 「あ。俺金持ってない。」
- 「え…私も。」
- 「さてどうしよう。」
47ページ目
- 青春(ハル)フィクション(オオ木V。)①
- 「……久しぶり、パライア。」
- 名前で呼んでくれ後生だ桜くん
- 枝(24)同級生五浪
- 「村木がちょっとバカでよかった。」
- 「明日返すからお金貸して。村木ス。よろしくス。」
- 「まあ、どうぞ」
- 「あ、ありがとう。しみず。」
- 「愛か。愛なのだな。」
- 「俺はお前たちの愛に舞い降りた資本主義の天使というわけだ。」
- 効果音ぱいらっ?
- 「あーまあつきあってるとかどうかなんー。」
- 「昨日ックスよ。」
- つきあってるのかと僕は喜ぶ。
- 「枝くんも行く?」
- 「俺の死を見たいのか?」
- 効果音ボン、ボヤージュ。
48ページ目
- 「さっきはああ言ったけど、」
- 「ね、」
- 効果音ファーくったくた
- 「……これから、どうしたい? レイニーくんの都合もあるし、 全部なかったことにしてもいい。 ……よ。」
- 「じゃあ」
- 「村木がいいんなら、 仲良くしようよ。 イヤならいいけど。」
- 「……。」
- 「んー…やっぱそうなるかー……。」
- 「真面目だもんねー」
- 「いいの? 私すっごい めんどくさいよー?」
- 「平気。」
- 「自分以外誰でも めんどくさい。 なら自分で選んだ人のがいい。」
49ページ目
- 「まあどうでもいいや。」
- 「私は帰る。唐突に。」
- 「ん」
- 「おつかれさん。」
- 「次いつ遊びたい?」
- 「今。」
- 「・・・えー・・・え?」
- 「・・・もしかして中身すっごい子供だったりする?」
- 「そうだよ。」
- 「あのねーそんなんだとあっという間に飽きちゃうんだよ。」
- ナニヨイマサラ
- 「また来る。連絡はしない。」
- 「そのまま寂しく待ってなさい。」
- 「じゃあね。」
50ページ目
- 春。
- 僕は更に所帯じみていた。
- 何もしたことがないので何も出来なかったが、
- 僕の春は万能感にあふれており、何でも出来そうな気がしていた。
- 効果音うーむ
- 村木は大学生になった。
- 「ただいまー」
- あの日以来、週に何度かふらっと遊びに来る。
- 僕は自分も大学生だと言うことを完全に忘れつつあった。
- 効果音ピンポーン
- 「?」
- 効果音ヒョコ
51ページ目
- 「髪切ったの?」
- 「うん ぼさり。」
- 「で大学はどうだい。」
- 「いやー、正直もうきつくて。」
- 「毎日ついてけてなくて 恐怖だよ……」
- 「あー もうなんにもしなくない。 なんにもできない。」
- 効果音よいしょよいしょ
- 「じゃあさ、今度僕も一緒についてっていい?音大の授業見てみたかったし。場所どこだっけ。」
- 「ほんと!?」
- 「ここから2時間電車に乗って30分バス乗ってちょっと山登ったところだよ!」
- 「そりゃ疲れるわな。」
52ページ目
- 毎日往復6時間。
- 「もう少し大学へ近いところに引っ越してやろうか?と言いかけ」
- 「何だそりゃ、と口をつぐむ。」
- 「授業いってくる!」
- 「いってらー」
- 「…僕は一体何をしているんだ…」
- 結局自分に何もないから、村木を応援するふりをして、何かしてる気になりたいだけでは
- きみは選んだのだ内側からひそかにきみ自身を。
- そして生きるとは屈することなく選び続けること。死ぬことをも含めて。
- 大学の庭で、清間卓行
53ページ目
- ピアノしかなかった部屋に段々生活感が生まれた。
- 時計も電話も、ベッドも買った。
- 食えるものも作れるようになった。
- 「ピザ焼く。食う?オーブンも買った。」
- 「食う!」
- 合い鍵も作った。
- 「……やさしいね。」
- 「不安になるくらい。」
- 「……ちがう。」
- 「他に何もできないんだ。村木はピアノを弾け。それ以外は僕がやる。」
- 「そんなことないよ、色々できるよ。無理しないで。」
- 「違うんだ。僕は何もできない。本当に。」
54ページ目
- 「村木は時々おし黙って人形みたいになる。」
- 「僕にはどうしたらいいかわからない。」
- 「わからないので、僕もおし黙って人形みたいになる。」
- 「前の彼氏がものすごく束縛のきつい人だったの。」
- 「でねー」
- 「色々面倒ですー。こっちは受験でそれどころじゃないってのに。」
- 「もーどーでもいいんだけど。」
- 「あのポイペルぴょんぴょんぴょんぴょん」
- 「レイニーくん、ああしろこうしろって絶対言わなかったでしょ。だからすき。すきになった。」
- 「僕はそんな仏みたいな人間ではない。」
- 「言葉で縛らないでくれ。」
- 「違うんだ村木。」
- 「君は優しいからすき。」
- 「君のその、優しいところが、すき。」
- 「優しい人になってしまう。」
55ページ目
- 「まああれだけ毎日練習させられればね。」
- 穏やかで幸福な日々が、僕に大きな余裕を与えた。
- 村木は次第に僕のピアノを弾かなくなった。
- 「じゃ 行ってきまーす」
- 社交的で明るい村木には、すぐに仲間も出来たみたい。大学生活を早々に失敗した僕には、とてもとても眩しかった。
- 「村木か。なんだい?」
- 「あのねー今サークルの仲間で飲み会してるのー レイニーくんも来ない?みんなに紹介するー」
- そうやって僕は僕自身に油断してしまった。
- 効果音RRRRR
- 夕方
56ページ目
- 「やーやーどうもどうもレイニーです」
- 「はじめましていやどうもどうもいただきましてどうもどうもいや全くありがたいお話でど」
- 「レイニーくん、こっちこっち」
- 「まあまあ一献一献」
- 「みなさんは何のサークルで?創作部?ほう素敵ですね!」
- 「これ作品?拝見します」
- 「わあきれいですね素敵ですね」
- 今までとは違う。僕は村木に社会性のあるところを見せたかった恥をかかせたくなかった。よい恋人だと思われたかった。
- 勘違いブルーハーツ感濃厚なバンドマン先輩(2留・6年生)。
- 「なああんたさー。」
57ページ目
- 「なんもわかってねえなーソフィーがない。哲学がない。」
- 「ハイすみませんえー気ィつけ!」
- 「インテリちゃんには本当のアートはできねえ!俺らマジだから。およびじゃないー」
- 「哲学、文学科」
- 「先パイ スゴーイ」
- 「ニーチェ読んだことある?知ってる?ねーだろ。永上だ帰知るってるか?知らねーだろ?一般人は薄いんだよな。薄いんべらい。」
- 「だめだ、こい込みねーわ。村木ちゃん、こいつ多分口ばっかだ。見限れ、見限れ。」
- 「イヤでごめん先パイ」
- 「お兄さんとおつきあいーよーお兄さんーも音楽レートもマジよ?トポロジーよ?ダダイズムよ??ニヒリズムよ?どうよ?マジどっよ?」
- 「先輩スゴク勉強ナリマス」
- 「イヤー先輩ステキ。」
- 「黙れ。」
- 「僕は昆虫が嫌いだ。潰してもつぶしても湧いてくる。いつまでも僕の、僕たちの、邪魔をする。」
- 結果的に僕は一年前と全く同じ失敗を繰り返し、「優しいイーくん」を保てなくなってゆく。
59ページ目
- 「気まずい……」
- 「……あの、さっきはごめん。」
- 「……何が。」
- 「いやあの」
- 「我慢できず、」
- 「君たちの先輩をむにゃむにゃ」
- 「ふうん。」
- 「何がごめんなの。」
- 「ちゃんと言って。」
60ページ目
- 「まあね、」
- 「あの先輩もどうしようもなかったけどさ。なんだろうね、アレ。」
- 「ああいう人何言ったって一緒じゃない?」
- 「一生あんな風に、なんにもできないまま生きていくんだろうし。」
- 「君も、」
- 「思ってたよりずっと子供だった。」
- 効果音きゅっ
- 「私ね、できるなら君とずっと一緒にいたいんだ。もし君もそう思ってくれるなら、」
- 「私をがっかりさせないで。ちゃんと考えて、ちゃんと大人になって。チャンスはそんなに何回もあげられない。」
61ページ目
- 「わかった? 聞いてる?」
- 「私色々あったけど、でも 君を選んだんだよ。」
- 「もうちょっと 信用してよ。」
- 「大体さー」
- 「君は人のこと 信用しなすぎだよ。」
- 「……わかった、ごめん。」
- しかしそれでも僕は 誰も信じていないし それに自分自身気づいていない。
- 「僕は不安で不安で、 いつも不安で、」
- 「不安だから、 絶対に解けない手で 村木を縛ってしまいたかった。」
- 効果音おなかすいたー
62ページ目
- それでも僕は
- 加速度的に 村木に溺れていく。
- 「もう 昼だよ」
- 消せない不安を ふり払うように、
- 僕の生活は、 朝から晩まで 村木のことばかり。
- ピアノもアートも どうでもよくなった。
- 疑問はなかった。 僕は幸せだったからだ。 いや、幸せでなければ ならなかったからだ。
- そんな晴れたある日。
- 「レイニーくん」
- 「もしかすると……」
- 「わかんないけど もしかしちゃったかも……」
- 夢から醒める時が来る。
63ページ目
- 効果音プッ... プッ...
- 効果音プツッ
- 「……あのさ……」
- 「黙って。」
- 「だから!さわんないでよ!」
- 効果音パン
- 「う…ごめんね、レイニーくん。」
- 「私しばらく家帰るのちょっと一人にして……」
- 「………」
64ページ目
- 村木はその夜家に帰ったが、
- 僕はとても楽観的だった。大学に何の未練もない。やりたいことも全くない。村木さえいてくれれば、と20歳の僕の思い込みは急速に僕の世界を狭くした。
- 翌日から、近所の運送屋でアルバイトを始めた。
- 早く金を稼げる大人になりたかった。
- 午前3時から午後3時まで毎日荷物を運ぶ。バイトも初めてだったが、悪い気分ではなかった。
- 僕は酔っていた。
- 「……だから、気づかなかった。」
- 村木を一人にしては絶対にいけなかったんだ。
65ページ目
- 「結構まとまった額を稼げた...。」
- 「生活面はまあなんとか。」
- 効果音RRRRR
- 「はい。」
- 「ああ、森ちゃん。」
- 「うん。うん。」
- 「3時に公園。わかった。」
- 急に森ちゃんに呼び出された。
- 「やぁ」
- 相変わらず、僕一人何もわかっていない。
- 「ええ...何ちょっと待って。」
- 「おい ちょっとアンタ何してくれてんだ!」
- 「中途半端はやめろってあんだけ言ったろうが!」
66ページ目
- 「村木ちゃんに大体話は聞いた。」
- 「あの人さー、すごい人なつこいでしょ。だからいつも誤解されるんだけどー」
- 「すっごい臆病もんっていうか、」
- 「人見知りするのよね。カテー複雑だし。」
- 「そうだね。ピアノがそんな感じ。」
- 「だからさー、あの人自体すっげーめんどくさい性格してて、言ってることそのまま受け取ってるとどんどんこじれちゃうのよ昔から。」
- 「レイニーちゃん何してたの。連絡もしないで。」
- 「……ずっとバイトしてた。生活力ないとーとか思って。これから。僕は、」
- 「はー!何で男はそう飛躍するかね…。もうちょい現実見なよ。何日も村木ちゃん帰ってきてないでしょ。」
- まだ自分が頑張らねばという名目で、自分のことばかり考えていたことに気づいていない。
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- 「……村木ちゃんの前の彼氏の話、聞いたことある?」
- 「……ああ、束縛キツかったって話だけ。」
- 「それだけ?他には?」
- 「……それだけだ。」
- 「……私、あいつ大っ嫌い。本当ろくでなしだった。だからさっさと別れろって何度も言ったの。」
- 「村木ちゃんね、」
- 「……。」
- 「前、一度子供堕ろしてるの。」
- 「その時もね、あいつ逃げたんだよ。何の連絡もなく。」
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- 「聞かなきゃよかった。いや、聞いてよかったのか。」
- 「ね、私一回戻るように言うからさ、」
- 「・・・あいつまた連絡してきてるみたいなの。」
- 「もうあいつに村木ちゃんを会わせないで。だめだから。本当。」
- 「お願い。」
- 「もちろん僕もそう思ったよ、森ちゃん。」
- 「でも今自分が何を考えているかも、よくわからない。」
- 「もう誰か教えてくれよ。僕が一体何をすれば僕たちだけが幸せになれるのか。」
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- 村木は、
- 「ただいまー」
- 「さみしかった?」
- 「ねえ、さみしかった?」
- まるでいつもの村木になって帰ってきた。
- 「まず報告…」
- 「私ね、妊娠してなかったよ。ストレスがどうこう…だって。」
- 「あ…えっとね…」
- 「そう……」
- 「そう。」
- それはきっと本当のことだろう。でも何だか僕はもやもやとした。そんな自分もいやだった。
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- 「…こないだ森ちゃんに聞いた…色々。」
- 「あの子はね、彼を紹介したのが自分だから必要以上に気にしてるだけ。」
- 「じゃあその……まだその彼と会ったりしてるのか?僕を余計に不安にする。」
- 村木のそういう醒めた言葉が
- 「……結局ね、私の問題なの。私一人の当たり前のことだけど。」
- 「ねえ私、前にちゃんと言ったよね。君を選んだって。それでも気になる?知りたい?」
- 「僕は…不安だよ。いつも。急に村木がどっか行っちゃうんじゃないかって。」
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- 長い長い沈黙。
- 「...........」
- 「うん。」
- 「君は、...そうなんだね。じゃあ、ちゃんと話をしよう。」
- 「......私は君のこと、やっぱり信じることにする。」
- 「...呼んだから。」
- 「あの人。」
- これが結果的に僕に与えられた、最後のチャンスになった。
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- 「なんだこれは……。」
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- 「えっと……林田っス。」
- 「レイニーです。」
- 「林田くん、お花屋さんなんだよ。詳しいの。」
- 「そうスね、でもまあ難しいと思うんで、ダメならお花屋さん。お花屋さんでバイトから。」
- 効果音II-3参照
- 「そうか…アレはコレか……」
- 「よくわかんないっスけどどぞよろしくっス!」
- 「この口調……」
- ひどくイヤな気分だ。
- 「おはよっス!調子どうっスか?」
- 「これもコイツからか……」
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- と言った村木の、
- 「私ね、できるなら君とずっと一緒にいたいんだ。もし君もそう思ってくれるなら、」
- 「私をがっかりさせないで。ちゃんと考えてちゃんと大人になって。チャンスはそんなに何回もあげられない。」
- 「どした?」
- 「「ちゃんとした大人」が一体何なのか、」
- 「僕にはさっぱりわからず、」
- 「ぺきかべきなのかべきかべきなのかべきなのかそして、保留。」
- 効果音うんうん
- 効果音うんうん
- 「うん」
- 「黙って林田を叩きだすべきか、」
- 「そうだね」
- 「二度と村木に近づくなどでも言うべきか」
- 「暖昧で暖昧に曖昧な態度。」
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- 「僕は保留に保留を重ね、」
- 効果音ぺらぺらぺらぺらぺらぺらぺらぺら
- 「中途半端にものわかりのよい、」
- 「何をしゃべっているのか、 自分でもわからない人になった。」
- 「…もう話題なくなっちゃったねえ。」
- 「…最後にお願い。林田くんと二人で話しさせて。」
- 「え……」
- 「お願い。」
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- 「……すぐ済む。。。」
- 「じー」
- 僕はこうして自分の部屋から出て、
- 効果音パタン
- 目の前の駐車場の、 自分の車の中で、
- 「速く話終わって林田が帰らないかな。」 などと、 考えていた。 この時点でさえも。
- ……昆虫は、 自分だった。
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- 「村木の考えていることは、僕にはわからない。」
- 「僕はただ、時々ふとさみしい顔をする村木を、」
- 「そのさみしげな顔を、理解したいとだけ思って、」
- 「村木に近づく全ての悪意をはねのけてしまいたい」
- 「その力がほしい。村木がそんな顔をしなくていいように。」
- 「レイニーくん」
- 「でも、」
- 「その顔は、僕自身に向けられたものだった。」
- 「レイニーくん」
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- 「行かないでよ」
- 「……ハルカ。」
- 僕はこの期に及んで
- 村木を初めて、名前で呼んだ。
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- いや……もう……ハルカを一人にしないから……考える……考えるちゃんと……頑張る、もっと頑張る……だから行かないで、ここにいて、僕が悪かったから、全部何も考えなかった、自分のことしか考えてなかった、僕が悪かったから、ごめん、だからごめん、だからー
- 「なにそれ。どうしたの?急に名前で呼んだりして。」
- 「ふうん。」
- 「で?」
- 「あ……だから……」
- 「で?」
- 「うん、私は帰るね。」
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- 村木ハルカは、行ってしまった。
- 僕はただじっとしていた。何分何時間、何日、何週間、そうしていたのか、覚えていない。なんで、それは格好つけすぎだ。せいぜい半日か1日だろう。
- しばらくして、再び村木から連絡があった。普通の口調だった。何事もなかったみたいな、口調だった。
- 「あ、うん。」
- 「……そう。うん。」
- 「……わかった。」
- 僕は、ありもしないお花畑を、一人っきりでずっと歩き続けていた。
- 僕は、心のどこかで、また村木が戻ってきてくれるかも、もしくは、友達としてやり直してくれるかも、と思った。
81ページ目
- 効果音かたん…
- 効果音かたん…
- 効果音かたん
- 効果音かたん…
- 効果音かたん かたん…
- 「しんまなべ」
- 「しんまなべ」
- 「通過列車を…」
- 効果音ふしゅー
82ページ目
- 「あの…勝手に話していいかな。最初から。思っていること。」
- 「……。」
- 最初はね、教室の外を通りかかって、平均律をハルカが弾いてて、それで…
- 「村木は何も話さない。僕はしばらく村木の話をした。正直に。ゆっくりと。」
- 「それで…あの時、自分が学生なのが嫌でさ…バイトしてた。」
- 「生活力のある人間だと思われたくて。」
- 「…ごめんな、一人ぼっちにして。あの時引き止めるか追いかけるかすればよかった。とても後悔してる。」
83ページ目
- 「……色々あったけど、」
- 「僕は……」
- 「ハルカがいないと…」
- 効果音ガツ
- 効果音スッ
- 効果音ぷしゅー
- 「何それいつまで酔ってんだ。来なきゃよかったよ!バッカみたい!」
- 「大っ嫌い!」
84ページ目
- 何故僕はいつも...
- 全て終わってから考え始めてしまうのか…バカなのか?
- どうせなら、こんなことになる前にちゃんと考えればよかったのに……
- 「大、嫌い!」
- 何がだめだったのか、よくわからない。あんな急に……急にでもないか……
- これで終わってしまった、ということだけはいくら僕でもわかる。ああそうだよ。どうせ僕は誰の気持ちもわからないさ、ほっといてくれ。誰もいないけど。
- 僕は嘔吐する。何度も、何度も。
- ……いやだな。……さみしいな。
- 効果音えろっ
85ページ目
- 「レイニーくん!」
- しかし思ったより哀しくない。 なんか普通だ。 吐いたから? それとも。。。
- 「僕はハルカが そんなでも なかったのか?」
- 効果音オエッ
- 「僕はバカか。。。。ピョーキ? いや、ないない。ないない。」
- 「。。。」
- 「レイニー くん!」
86ページ目
- 「思ったより哀しくない」
- 「僕はハルカがそんなすきでもなかったのかな。」
- 「ね。」
- そんなわけあるかバカ野郎。
87ページ目
- 「ザーーーーーくん?」
- 「パッパッです。」
- 「公衆電話・・・・ 。」
- 留守番電話が入っていた。
- 「・・・・・・さっき叩いちゃってごめんね。」
- 「・・・・・・それだけ。」
- 「林田君とはもう何もないよ。」
- 「・・・・・・って関係ないか。」
- 「・・・・・・。」
- 「私ね、もうそこへ行かない。会いにも行かない。」
- 「・・・・・・。」
- 「・・・・・・うまくいかないね。」
- 「でもね、私ね・・・・・・」
- 効果音ピー
- 「あ・・・・・・うん、ごめん・・・・・・」
- 「・・・・・・バイバイ、ハセガワくん。」
- 効果音ツーッ ーツーッ
- 「・・・・・・なんだよ。」
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- 村木ハルカが連れてきた僕の部屋の生活感は、
- しばらくして、全て失われた。
89ページ目
- 月日は百代のどうのこうの。
- 「先輩がすき!」
- 「だいすき!」
- 「ええ・・・」
- 「軽いなお前・・・・・・」
- 「軽いっス! 軽さが持ち味っス!」
- 「小津先輩」
- 僕は村木ハルカに、最後まで一度も好きだと言わなかった。 言ったかもしれないが、覚えていない。 そのダメージは、僕を激しく別人に作り変えた。
- 「せんぱい せんぱい しあわせ♪」
- 「あーうるせー!」
- 「彼氏いるよ。別れる予定もない。」
- 「何でお前知り合ったばっかでそんなにハイテンションなんだ。 頭おかしいのか?」
- 「まあまあ、いーんスよ、俺のことは。」
- 「わかんないスけど、すきって思ったんス。 俺はそれでいいんス。 でも別れたら?そうだ別れよう!」
- 「迷惑かけないんで・・・・・」
- 「・・・全くわからんな。」
90ページ目
- 「結局お前何が好みなんだとちゃんとしゃべれ。」
- 効果音キラーン
- 「先輩みたいな人っス!」
- 「あ、そ」
- 「……お前それわざとやってんだろ。」
- 「さあー?」
- 「まあでもですね、」
- 「先輩みたいな人か」
- 「まだ言うか。」
- 「……ピアノ。かなー。」
- 「ピアノ?お前が弾くの?想像つかん。」
- 「どーでしょー。」
- 意味のあるなしはさておき、
- 「私はピアノなんて弾かん。」
- 「先輩はいーんスよ!十分かわいいっス!発狂しそうな魅力っス!」
- 長い長い日々を越えてやっぱり僕は言おう。
- 「僕は」
- 「ポイ捨てすんな!」
- 「村木君のピアノが」
91ページ目
- 村木ハルカが、好きだった。


























































































