2024.4.1
シリーズ:さみだれデイズ270P
美術部の後輩「さみだれちゃん」は一言もしゃべらない女の子。
「僕」はそれでもさみだれちゃんと一緒にいる。
→本編
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「そういう風に出来ている。」
年齢と共に人を好きになる能力も衰えていく。
特に人と関わることなく生きていきたいと思うようになる。
さみだれちゃんは一言もしゃべられない。
僕が結婚する前に、最後に仲良くなった人間である。
「無風地帯。」
「君のためを思って言ってるんですよ」
「君のこと、わかる気がする」
「その生き方もアリかな。」
「ちょっと一旦落ち着こ?」
そうやって風が吹く。
どうでもいい風だ。
ねっとりと粘りつく、
なまあたたかい風だ。
みな風が吹く方向を向いて
逆らったり流されてみたり。
いらなかったんだ。
そんな風なんて。
君自身には、
いつだって風が吹かない。
「さみだれちゃんと僕。」
僕はあまり「出会い」「出会う」という言葉を使わない。
自然に誰かと仲良くなることはほとんどなかったからだ。
だから僕はさみだれちゃんと出会ったわけではなく、
ただただ虚しいだけの僕のその季節に、
見つけた、のだと思う。