2024.4.1
「沈黙の。」
でもその地味なところに到着するまでに、
派手派手しい、
けばけばしい、
愚かしい、
自分であるという厄介な荷物を
軽くしていく作業がある。
それは一人ではできないことだよ。
どんなに努力したって。
美術部の後輩「さみだれちゃん」は一言もしゃべらない女の子。
「僕」はそれでもさみだれちゃんと一緒にいる。
→本編
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でもその地味なところに到着するまでに、
派手派手しい、
けばけばしい、
愚かしい、
自分であるという厄介な荷物を
軽くしていく作業がある。
それは一人ではできないことだよ。
どんなに努力したって。
人と自分を比べる必要などない、
とはやっぱり言えない。強がり、あるいは格好つけてそう言いたい時もあるけれど、
これだけ目に見えるものが増えればどうしても見てしまう、比べてしまう。
なら徹底して比べればいい。
嫉妬も虚栄も、自分で見えていればそんなに醜いものでもない。
僕はそういうことを描いていたい。
いつまで描いていられるだろうか。
20代後半にさしかかると、
僕の人を好きになる力は急速に衰え、
けばけばしい情緒の上下はなくなってゆきます。
20歳の時には数ヶ月しかもたなかった人間関係が、
自分自身の安定と共に長く続けられるようになり、
「こうすべき」「ああすべき」と思っていたことが
どうでもよくなって、
最初から背伸びをしなくなりました。
そういう時にはそういう人と出会うようになっている。
さみだれちゃんとは大分歳が離れていましたが、
楽でした。
「お互い高めあうような関係」など
僕の歪んだ自尊心が生むただのくだらないこだわりだと、
僕は始終居眠りしながら考えていました。