2024.3.16
「ぱぴぷぺ・ぴくちゃん!」(21)
マンガで描くと所詮マンガなんだけども、
昔から狐憑きとか悪魔憑きなどと呼ばれたこういうイカれた精神分裂は、徐々にでなくいきなり豹変するんでそらもうびっくりよ。比較的すぐ治るけど。
ぴくちゃんは僕の下宿の近くに住んでいた同級生。昔なじみの彼氏に殴られたり蹴られたりといった日常を送るうちにすっかり頭がスパークしてしまった女の子。
「僕」は見てて面白いのでスパークしたぴくちゃんを構い、匿い、見守っていた。
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マンガで描くと所詮マンガなんだけども、
昔から狐憑きとか悪魔憑きなどと呼ばれたこういうイカれた精神分裂は、徐々にでなくいきなり豹変するんでそらもうびっくりよ。比較的すぐ治るけど。
先が見えないのは時代のせいじゃない。
僕が先のことを考えたくなかっただけだ。
そうやってたくさん人のせいにした。
どんな意味であれ、
人に好きだと言われると嬉しかった。
でも僕は少しも好きじゃなかった。
分裂病、今の統合失調のぴくちゃんは、うつとは違い「真顔で語るが内容がおかしい」だけで元気いっぱいでした。
何もかも暗く湿ったこの時代にあって、全力で狂ってるぴくちゃんをある種爽快感と共に思い出します。
ぴくちゃんは誰が見ても立派な分裂病でしたが、
こちらが引いてしまわないで相手をしてあげていると、
色んな特性を見せてくれました。
言葉に強く執着するんですよね。
連想ゲームというかダジャレというか、
本気で何の意味もない文章から意味を見出そうとするのです。
そしてその自分が見つけた陰謀だったり裏の暗号だったりを
僕に必死で説明しようとします。
往々にして統合失調の患者がそうであるように、
ぴくちゃんも薬を飲んでいるうちにあっと言う間に治りましたが、
どの時点で治ったと言えるのか、僕にはわかりません。
大きな世界的組織の陰謀の中で、
殺される運命にあるヒロインだと自分を思い込む彼女を、
一体誰が不幸と断定できるんでしょうか。
目が覚めた方が不幸なのは
誰だってわかっていることなのに。