2024.4.1
シリーズ:村木SIDE B358P
ピアノ教室で出会った高校生。音大を目指しており、社交的でちょっと情緒不安定。
→本編
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「たった一枚だけ、の。」
村木の写真はほとんど残っていない。
残っているものも、全てモノクロフィルムだ。
当時写真は全部モノクロで撮影していたからだ。
文化祭が終わった時のような空気が流れていた。
僕と村木は残ってだらだらと後片付けをした。
長い一日が終わって、僕たちはしゃべる気力もなかった。
僕は黙って一枚だけ写真を撮った。
「失敗。」
「話を聞いてほしい」と言われているのに、
なぜ分析してしまうんだろうな。
もちろん今の僕はそんなことわかっている。
なぜわからなかったと言えば、
やはり自分のことばかり考えていたからだろう。
「君は家の話をするのが大嫌いだった。」
やることはやっといて
急に大人ぶって説教みたいなことを言ったりする。
そんな内心を高校生に見透かされ、
妙な自尊心の高さから、
僕は分不相応に他人の家庭に踏み込んでいく。
そしてこうした空気から3週間ほど経った朝、
阪神大震災が起きる。