2020年9月68P
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「人間だけが描くに値する。」
人間を描きたいと高校からずっと思っている。
どういう絵柄で描くかはその時の気分によるだけで、
人間の本質とはあまり関係ない。
僕は作家でも絵描きでもないので、
絵に個性も特徴も必要ない。
技術も求めてないので絵の勉強はしない。
ただ、同じテーマを求めて油絵を描いていた青年の頃と違って、
マンガは一度に色んな人間の姿を描けて便利だなあと思った。
刻々と変化する、一瞬ですら一定でない
実に不安定な存在である人間を描いていると、
どこかしら僕はほっと安心する。
「理由。」
前後もなくてこれだけだと想像するしかないと思いますが、
どうして先輩は僕に言わなかったんだと思います?
実はちょっと先輩も気があった、
僕を傷つけないように気を遣った、
自分だけ幸せになるのが後ろめたかった、
マンガならそんなバカげた都合のよい話もあるかもしれませんが、
実際のところは、
僕がまた勝手に思い込んで、勝手に傷ついて、
ポエム書いたりべらべら人にしゃべったりするのが
心から迷惑で鬱陶しかったからですよ。
好きってねえ、
はたから見れば実に醜いものです。
だからちゃんと自分で目を覚まさないと
結局つらいのは自分です。
「夜のうた。」
どうしてこう、人間てうまくいかないんだろう、
とずっと思っていたのです。
ビクビクしていても、堂々としていても、
たくさん話しても、押し黙っていても、
結局最後は噛み合わない。
かなしい。
結局それが常に人の顔色をみて行動している
自分自身に問題があったのだと気づくまで、
僕は心のどこかで僕は悪くない、君が悪い、
と思っていたのです。
かなしいとかさびしいとか、
そんな言葉で
君を追い詰めていたのです。
「ちがい。」
自分が「本当はこうしてほしかった」という
さみしい気持ちでそれを人にしてあげても、
大抵自分勝手で押し付けがましい善意になります。
人に優しくしてもらったことがなければ、
人に優しくすることはできないのだと僕は思います。
そう言うと、
じゃあそんな経験のない自分はどうしたらいいんですか、
だめなんですか、と訊かれます。
なんて答えて欲しいんですか。
大丈夫だよ、これからいいことだってある、
なんて僕は絶対言いませんよ。
わかりません、と答えます。
それは君次第です。
「そして裏垢で死ねと叫ぶ。」
もちろん話なんか最初から合うとは思ってないわけで、
人間に共通する普遍的な暗部をついて、それに沿って
話を合わせていく、というのが僕の距離の近づき方なのですが、
なんかこう、単純なところは単純すぎ、
警戒するところは警戒しすぎで、
若干成長したAIと話してるような違和感があった。
確かにこれだと人を好きにならないのも何となく理解できる。
何かがあって好きになれないのではなく、
好きになる能力がそもそもまだ生まれていないのだ。
いよいよもうおじさんは雑談さえ許されないんだろうか。
トオイヒビ「ラスボスの木。」
僕たちの高校の、一番人通りのない裏側に、
奇怪な形の巨大な木がありました。
僕はそれを「ラスボスの木」と呼んで、
人に見られたくない時の
待ち合せ場所によく使っていました。
授業中、小さな付箋に「ラスボス」と書いて
お互いの教科書に貼りつけたりね。
夕暮れ。
誰もいない校舎裏のラスボスの木の前で
一人ぼんやり立っているマキタは
勇者のようでもあり、
迷子のようでもありました。
「温度差。」
僕はひどく年齢を気にします。
高校生なら許せるが、それ以上なら許せない、
というような頭の固い価値観をたくさんもっています。
普段そんなものは外に出しません。
面倒になるだけなので。
でも心の中では冷えています。
いつまでも「高校時代のトラウマがトラウマが」、と
自分で自分を復活させる勇気を持たない人間を見ると
頭に来るのです。
そして自分と同じような、そんなタイプの人間を見て、
腹を立てるどころか仲間意識を抱く、
僕が最も許せないのは、そういうのです。
「田舎の住人。」
今は都心で2部屋しかないところに家内ちゃんと住んでいる。
やっぱり距離が近いので、うむむ、となる時もあった。
田舎の我が家は会わないでおこうと思えば
一日誰にも会わないで住む程度の人口密度が保たれ、
ある意味、鍵のかかる部屋が一つもなくても、
プライバシーが遵守されていたように思う。
ひっそり死んでても絶対誰も気づかないと思う。
だから僕はうちで自殺したいと思ったことはない。
「僕の絵オフ。」
どんな人間がどんなかわいい絵を描こうとも、
僕にとって一番「かわいい」のは、
男であろうが女であろうが
目の前にいる人間そのもの
であり、
それ以外に価値はない。
僕が常に自分を語るのは、
人に自分を語らせるための前置きでもある。
「もっと。」
出来てたことが出来なくなってゆく過程は、
こんなにも苦しいものかと、
身を持って知った。
が、でもそれで強くなったとか何かを得られたということはない。
弾きたい。弾きたい。
元のように。
「ひかるの話。」
僕の作った駆け込み寺は、人生相談の場所ではない。
僕の純粋な好奇心から発生した、
肯定も否定もないただの場所だ。
僕は空気を読んで「そうだね」とか「つらかったね」などと
言ったりはしない。
「死にたくはない、消えたい。」
これは今でも僕にはピンと来ない。
でもひかるは僕の前で正直に自分を語った。
「能力者。」
家内ちゃんは元々マンション暮らしなので、
大量に排出されるゴミの片付け方に熟知している。
一方僕はいらないものは全て広い庭で燃やすだけの
田舎出身なので、ゴミを整理するという感覚がない。
じゃあ家内ちゃんがやればいいと思うんだが、
家内ちゃんの言い分としては
「部屋が狭くて気分悪いのは夫だから夫が片付けるべき」
という。
家内ちゃんは箱に囲まれているのが安心なのである。
なんと上手くいかないことだろう。
それが面白いわけなんだが。結婚生活は。
「居場所。」
「今はネットがあるから誰かと繋がれるしさみしくない」
は10年ほど前によく聞いた言葉だ。
僕はそれを嘘だと思った。
そして今でも嘘だと思っている。
僕たちは何ともつながっていない。
個人主義は欧米のように、
僕たちには冷酷に見えるほどの自立を前提として成立する。
僕たちの個人主義はただのわがままと孤立だ。
あぶれたマイノリティを理解することは大事かもしれないが、
その前に僕たちはきちんと人と繋がり、
そして決別しなければならない。
「オータニ。」
全く時間を測って描く、みたいなアカデミックなことは
やらなくなりましたが、
集中して何かをやるにはいいかもしれませんね。
久しぶりにワンドロ(1時間ドローイング)をやってみました。
ちなみに1時間集中力は普段絶対もちません。
2分くらいですね。大体。
「夫さんは心配症。」
僕はまあクヨクヨと気に病むたちなので、
思わせぶりな状態が続くとおかしくなってしまいます。
昔、「お父さんは心配症」というマンガがありましたが、
笑って読み飛ばせない程度には、あんな感じです。
家内ちゃんは大体何も考えていませんが、
何か考えてる風の顔をしています。
女子とはそんなものかもしれません。